太古より人は自然の恵みを享受して生きてきました。しかし歴史を振り返ると、自然災害により多くの人命が失われ、人的な自然破壊で被害を受けることもしばしばありました。
自然を知り、危険な場所を回避して安全な土地を選ぶ。安心して暮らせる住環境をつくる。そして「風水」は自然と共存するための知恵として発展したのです。
風水は古代において「堪輿」と呼ばれていました。堪は天体、輿とは地理という意味です。天体の観測によって「時間」という概念は生まれました。地理によって定住生活を営むために「空間」という概念が生まれました。つまり、風水とは、「時間」「空間」という意味なのです。
「時間」「空間」という意味である風水を考える上で、「巒頭」と「理気」という二つの側面を見る必要があります。
・巒頭は、山川 (龍水) 形勢に依拠し、生気のあるところを察するための地学であり、地理です。周辺環境を分析し、身近に有害な影響をもたらすものはないかを分析し判断する方法です。
・理気は、方位・空間 (向) に依拠し、時間の変化による影響の吉凶を精査します。
現代風に言えば、巒頭はコンピューターでいうところのハードウェア、理気はソフトウェアに例える事も出来ます。
環境としてのハードがしっかりしていなければ、いくら最新のソフトをインストールしても風水の恩恵を受けるのは難しいと言えるでしょう。
麗しい山水を見て美しいと感じる時、知覚器官から人の意識にまで影響を与えています。風水では目に見える形のあるもの、「空間」からの影響と考えます。引っ越しや部屋の模様替え等、近所での住宅建築や道路工事による「空間」の変化からも影響を受けます。
また、同じ建物でも経年劣化により脆くなったり、周辺環境が変化することがあります。これは空間に変化を起こした「時間」の影響を受けていると考えます。
永遠に変化のない「空間」も「時間」もないのです。
巒頭は「空間」を、理気は「時間」を分析していきますので、風水は空問と時問を哲学する学問とも言えます。
そして、空間、時間、人間の調和を探求してきたのが風水です。言い換えれば、風水とは自然界における理想とすべきよりよい生を享受するための叡智なのです。